障害年金の基礎知識!【障害年金】人工関節で受給できるの?
下肢や上肢に人工関節の置換手術を受けている方は、少なくとも障害厚生年金3級に該当する可能性が高いです。ここでは、障害年金の基礎知識と共に、人工関節での障害年金請求についてお届けします。
人工関節とは?
人工関節というのは、人工関節置換術といい、主に変形性関節症や関節リウマチなどの疾患で悪化した関節表面を取り除き、人工関節に置き換えることです。人工関節は、金属、セラミック、ポリエチレンなどでできており、関節痛の原因である部分を取り除くための治療法になります。他の治療法と比較して、痛みを取る効果に優れているのが特徴です。対象疾患には、変形性関節症、関節リウマチ、骨壊死症などが挙げられます。関節痛や動きの悪さで、日常生活に支障が及んでいる方もいます。手術以外の治療法を行っても、症状が軽減されない場合に人工関節手術が行われています。
障害年金とは?
障害年金というのは、被保険者が病気やケガで障害状態になり、日常生活や仕事などが制限された際に、生活安定のために支給される年金になります。障害年金は、2つのタイプがあり、障害基礎年金と障害厚生年金があります。医師または歯科医師で初めて診療を受けた日(初診日)に、国民年金加入者の場合は障害基礎年金、厚生年金加入の場合は障害厚生年金を請求することが可能です。障害基礎年金は、1級・2級があり、障害厚生年金は1級・2級・3級があります。また3級より少し軽い障害の場合も受給可能な場合もあります。いずれについても、障害認定日または請求日(事後重症請求)における障害状態から判定されます。
障害年金を受けるための要件とは?
初診日
初めて病院を受診した日(あるいは初めて病名を医師から告知された日)が初診日です。受診状況等証明書で証明する必要があります。
保険料納付要件
年金保険料納付要件に関しては、「初診日の前日において、初診日の属する月の前々月迄の国民年金加入期間において、年金保険料の納付月数と保険料免除期間、学生納付特例または若年者納付猶予の対象期間の合算月数が2/3以上有ること」(原則)。またこれを満たしてなくとも、「初診日の前日において、初診日の属する月の前々月迄の過去1年間に年金保険料滞納月が無いこと」(特例)。また、被保険者でない20歳前の傷病で障害状態になった方は、保険料納付要件は特に問われません。
症状が認定基準に該当
障害程度が認定基準に該当しているかがポイントです。下肢の認定基準では、一下肢の3大関節で1関節以上に人工関節をそう入置換した、両下肢の3大関節で1関節以上に人工関節を挿入置換した方は3級と認定されます。原則人工関節は、3級になります。挿入置換しても、一下肢に関しては一下肢の用を全く廃したもの、両下肢に関しては両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの、これらに該当する場合は上位等級に認定されます。一方、上肢の認定基準では、一上肢の3大関節で1関節以上に人工関節をそう入置換した、両上肢3大関節で1関節以上に人工関節をそう入置換した、このような方は3級と認定されます。また、そう入置換しても、一上肢に関しては、一上肢の用を全く廃したもの、両上肢に関しては、両上肢機能に相当程度の障害を残すもの、これらに該当する場合は上位等級に認定されます。
初診日が国民年金加入であれば、障害基礎年金のため、3級はありません。
人工関節で障害年金受給するための手続きとは?
受診状況等証明書
受診状況等証明書は、傷病の症状で病院を初受診した初めて受診した日を証明する書類になります。受給資格や年金の納付状況を確認するために必要になりますので初診日の病院で作成の依頼を行いましょう。よくあるケ-スとして、就労しており人工関節で受給できると知らなかった、初診の病院がわからない、カルテが残っていないなど、よくあるケースです。基本的に、病院のカルテ保管期間は5年です。よって自分の記録が破棄されている、あるいは、廃院になり受診状況等証明書が取れないという場合もあります。こうした場合、病院の診察券、生命保険などの給付申請時の診断書、診療報酬明細書、領収書、第三者証明など、いろいろな資料を基に初診日の証明が可能になる場合もあります。
診断書
初診日から1年6ヵ月以内に人工関節を入れた場合は、その置換日が障害認定日となります。また初診日より1年6ヶ月経過後に人工関節を入れた場合は、原則事後重症の請求となります。
診断書のポイントは、人工関節の装着状態欄では、複数の箇所に人工関節を入れている場合、そのことがはっきりわかるよう記載が必要です。また、関節可動域及び筋力欄もできれば記載してもらいましょう。日常生活のおける動作の障害程度では、片足立ち、正座、あぐらができるかの有無など、動作に関する支障を正確に記載してもらい、補助具使用状況に関しては、杖や歩行器の使用有無、についての記載は重要となります。その他の精神・身体の障害状態に関しては、人工関節以外の精神や身体の状態について記載して下さい。
病歴・就労状況等申立書
病歴・就労状況等申立書は、発病時から現在に至るまでの経過を約3~5年または病院ごとに区切って記載する書類になります。受診状況等証明書と診断書は医師に作成してもらいますが、この書類に関しては請求する本人が作成します。今までの病歴、通院歴、日常生活状況、就労状況などについて申し立てするものです。
障害年金請求は速やかに!
障害年金は、時間が経過すると過去分がもらえなくなることもありますので、できるだけ速やかに請求することが必要です。また、請求しなければ、障害年金を受け取ることはできません。たとえば、初診日から1年6ヶ月経過後に人工関節置換術を受けた方で、術後1年以上経過してから障害年金請求を行った場合、手術の月の翌月からの受給は不可能になります。この場合、事後重症請求になり、請求月の翌月からしか受給はできません。よって、人工関節の障害年金請求は簡単にできると思われている方もいるかも知れませんが、不利益にならないためにも早めの行動が必要です。
まとめ
杖がないと歩けない・ゆっくりしか歩けない・階段の昇降が難しくなった・立ったり座ったりする動作が困難になった等、日常生活に不便をきたしていても、「障害年金の制度を知らなかった」や「人工関節や人工骨頭では障害年金の対象疾病と思わなかった」などの理由で、受給可能期間が少なくなっている場合があります。早急に障害年金請求の手続きを開始しましょう。
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